携帯電話による医療機器への影響

病院の中では携帯電話をどのように扱ったら良いのでしょうか

病院内には人命に直接関わる医療機器が多数設置されています。また輸液ポンプなどの医療機器を装着した患者さんが移動しています。 これらの機器は携帯電話により誤動作をおこす可能性があります。

そのため院内での携帯電話の使用を制限してきましたが、一定の条件のもとでの安全性が確認されましたので、平成17年年2月1日より携帯電話の使用制限を解除しました。 現時点のルールは以下の通りです。

携帯電話によって植込み型心臓ペースメーカはどのような影響を受けますか

不要電波問題対策協議会(平成14年6月より電波環境協議会)が平成7年から8年に掛けて実施した実験により、携帯電話からペースメーカーへの影響があった最大距離は15cmでした。 この15cmに安全係数をかけた22cmが安全距離として提示されました。(「医用電気機器への電波の影響を防止するための 携帯電話端末等の使用に関する指針」)

その後も何回か見直しが行われてきましたが、平成24年7月に電波出力が強力だった第二世代携帯電話のサービスが終了しましたので、総務省が第三世代(3G)携帯電話を使ってペースメーカーへの影響を調査したところ、携帯電話からの影響があった最大距離は3cmでした。 そこで総務省は平成25年1月、植込み型医療機器の国際規格との整合性を考慮して、距離指針を22センチから15センチに緩和しました。 (「各種電波利用機器の電波が植込み型医療機器へ及ぼす影響を防止するための指針」の改正

総務省は平成25年12月、LTE方式の携帯電話端末は心臓ペースメーカーなどへの影響はないとする調査結果を発表しましたが、実際には従来の携帯電話と同じ指針をLTE端末にも適用しています。 (平成24年度電波の医療機器等への影響に関する調査結果及び当該結果に基づく「各種電波利用機器の電波が植込み型医療機器へ及ぼす影響を防止するための指針」)

平成26年5月には、スマートフォン等の無線LANを内蔵した携帯電話端末について、30台60機種のペースメーカーを用いて測定したところ、携帯電話端末実機からの影響がなかったことが発表されました。 より条件の厳しいスクリーニング測定では3機種のペースメーカーで最大1.5cmの距離でレベル2(持続的な動悸、めまい等の原因になりうるが、その場から離れる等、患者自身の行動で現状を回復できるもの)の影響が出ています。 (平成25年度電波の医療機器等への影響に関する調査結果及び当該結果に基づく「各種電波利用機器の電波が植込み型医療機器へ及ぼす影響を防止するための指針」)

このように「各種電波利用機器の電波が植込み型医療機器へ及ぼす影響を防止するための指針」ではペースメーカーと携帯電話を15cm以上離すことが定められていますが、実際には3cmより遠くに離れれば影響は認められていません。 ペースメーカーを装着されている方も、満員電車で身体が密着するようなケースを除いては、それほど神経質になる必要はないと考えられます。

植込み型心臓ペースメーカを装着していても携帯電話を使えますか

携帯電話からの影響を全機種の植込み型心臓ペースメーカについて調べた実験から、15cm以上離せば影響を受けないと考えられます。植込み型心臓ペースメーカを装着した本人でも、念のためペースメーカが植込まれているのと反対側の手で携帯電話を使用すれば15cm以上の距離は得られます。実際には3cmより遠くに離れれば影響は認められていませんので、ペースメーカが植込まれているのと同じ側の手で携帯電話を使用している方もいらっしゃいます。

携帯電話によって補聴器はどのような影響を受けますか

携帯電話がごく接近した状態では補聴器に雑音が混入することがあります。デジタル携帯電話の送信波形は可聴周波数成分を有するパルス状の信号を繰り返すので、特に補聴器の可聴雑音を発生させやすくなります。

病院職員が使用している携帯電話のようなものは何ですか

医療用PHSの写真

医療用のPHSです。

PHSは、携帯電話に比べ医療機器に対して極めて小さな影響しかなく、病院内での連絡手段として積極的に取り入れられています。 ただし外観からは携帯電話との区別が困難なため、一般のPHSは携帯電話と同様の扱いとします。医療用のPHSは容易に識別できるように写真のような + 医療用 と書かれた赤いストラップをつけています。また医療機器への影響も全くゼロではないので、手術室、ICU、CCUでは電源を切ることになっています。

医療機関によって、携帯電話の使用に関するルールがまちまちですが、統一は出来ないのでしょうか。

以前は医療機関における携帯電話の使用は全面的に禁止されていました。

平成9年に不要電波問題対策協議会(現電波環境協議会)の「医用機器への電波の影響を防止するための携帯電話端末等の使用に関する指針」が発表されてからは、各医療機関が独自に安全性やマナー等を考慮してルールを定めています。 そのため、医療機関によって、携帯電話の使用に関するルールはまちまちになっています。

「指針」が出来てから16年が経過しており、最近の携帯電話が出す電磁波はかなり弱くなっていますし、医療機器の性能も向上しています。 そのため携帯電話の医療機器に与える影響はかなり少なくなっています。

そこで総務省と厚生労働省が、科学的な検証をもとにガイドラインを作成することになりました。 具体的には、平成26年1月から電波環境協議会の「医療機関における携帯電話等の使用に関する作業部会」において検討を実施しました。 その結果「医療機関における携帯電話等の使用に関する指針」及び「医療機関における携帯電話等の使用に関する報告書」が取りまとめられ、 平成26年8月19日に公表されました。

これをきっかけに、各医療機関における携帯電話使用のルールの見直しが実施されることになります。 携帯電話の使用制限が緩和されることになりますが、各医療機関でマナーの観点など個別の事情を考慮してルールをつくることになりますので、完全に統一することは難しいと思います。