医療機器の電気的安全性

一般の医療機器のほとんどが100ボルトの交流を電源としています。 この電源部からわずかに電流が漏れてしまう(「漏れ電流」と言います)のですが、現在の製造技術ではこの漏れ電流を完全にゼロにすることはまだ難しいようです。 もしもこの漏れ電流がヒトの体に流れ込むと、人体は流れ込んだ電流の強さに応じた反応を起こし、最悪の場合には心臓が動かなくなることもあります。 そこで、医療用の電気機器からの漏れ電流の許容値やその漏れ電流を少なくする方法などが JIS T 0601 という規格に定められています。 また、当院では臨床工学部CE管理科が重要な医療用電気機器の日常点検や定期点検を行い、それらの機器の電気的な安全性が確保されていることを確認しています。

電気に対する人体の反応

ヒトの体に電流が流れ込むとその強さに応じていろいろな反応が起こります。これを電撃あるいは電気ショックと言います。ヒトの皮膚は電気的な抵抗が比較的高く(平均的には1000[Ω]程度)、電流が流れ込みにくくなっています。そこで、電流が皮膚の表面から流れ込んで起こる電撃を「マクロショック」、皮膚を通さずに直接心臓に電流が流れて起こる電撃を「ミクロショック」と区別して扱われます。また、そのため医療用電気機器も身体表面のみに適用する装置と心臓に直接適用もできる装置とに分けられています。

《マクロショック》

電流と人体の反応の図

皮膚の表面から交流電源( 50あるいは60[Hz])の電流が流れ込んだときの人体の反応をグラフに示します。これらは、成人男性において一秒間電流を流したときの電流値を示しています。女性ではこの2/3程度、小児では1/2程度とされています。 約 1[mA]( = 1/1000[A])程度で「ビリビリ」感じはじめますが、これを「最小感知電流」と言います。さらに大きな電流が流れると、体の表面ばかりでなく体の内部まで流れ込んでいろいろな症状を起こします。その電流が心臓にある程度以上流れると、心臓の筋肉がバラバラに興奮収縮して血液を送り出せなくなります。このような心臓の状態を「心室細動」と言います。皮膚の表面から流れ込む電流が 100[mA]以上になるとこの心室細動が起こると考えられています。

《ミクロショック》

皮膚を通さずに直接体の中の特に心臓の近くに電流が流れると、ヒトでは約 100[μA]( = 0.1[mA])でも「心室細動」が起こると考えられています。この電流値を「ミクロショック心室細動誘発電流」と言います。このため、心臓に直接電極を近づけられるような医療機器は、JIS規格で特に「漏れ電流」を少なくするよう規定されています。

JIS T 0601

医療機器の各種安全性に関する基準が定められている規格です。主に電気的な安全性について定めていますが、機械的危険に対する保護や可燃ガスあるいは過度の温度による危険などに対する保護などを規定しています。国際規格である IEC 60601-1 に準じた内容で、1999年に制定されました。

医療用電気機器の漏れ電流の程度による分類

BF形マーク CF形マーク

JIS規格では、皮膚の表面に電極を取り付けて使用する装置(BF形:Bは身体bodyを意味する)と心臓に直接電極を近づけて使用する装置(CF形:Cは心臓cardioを意味する)とに分けています。患者に取り付ける電極から患者に流れ込む漏れ電流の許容値は、BF形では「最小感知電流」1[mA]の1/10である0.1[mA]、CF形では「ミクロショック心室細動誘発電流」 100[μA]の1/10である 10[μA]( = 0.01[mA])を基準に定められています。またJIS規格では、それぞれの図記号(左がBF形、右がCF形)も決められています。ヒトに装着して使用する医療用電気機器には必ずついているはずです。